公益財団法人トヨタ財団

  • 研究助成プログラム

2025年度研究助成プログラム 選後評

選考委員長 佐倉 統
実践女子大学人間社会学部社会デザイン学科 教授

 今年(2025年度)は187件の応募があり、その中から厳正な選考審査により10件を採択しました。いずれも本プログラムのテーマ「つながりがデザインする未来の社会システム」に相応しい、未来志向で学際的で新しい領域に挑戦していて、実践と研究の双方にバランスよく目配りした研究計画です。
 この研究助成プログラムは、研究だけにとどまるのではなく、研究の成果が社会実装や実践活動につながる計画や、研究活動と実践活動が相互に往還するような計画を支援することを目的にしています。それはかなりの程度達成できたと自負しているところです。
 一方で、採択された中にも研究と実践のバランスの取り方に苦慮された痕跡が見えるものもあり、また、両者の関係が偏っていたために独創的なテーマであるけれども惜しくも採択に至らなかった案件もありました。採択された計画はいずれも、単に研究と実践のバランスに配慮していただけではなく、両者の関係に必然性があり、それが計画全体の説得力を高めているものでした。
 分野としては、医療系と教育系を主とするものが多く、次いで福祉系と環境系を主とするものとなっています。もう少し分野の多様性が高いことを期待する声もなかったわけではありませんが、採択された研究計画はいずれも学際的な広がりをもっており、単一の分野におさまらず従来の学問領域を超えてユニークな発展の可能性を秘めています。採択課題のリストを一見したときの印象よりは、実際の研究活動の多様性は高くなるものと期待しています。
 審査は、毎年のことではありますが、難航しました。一次選考を経て残った申請案件はいずれも水準が高くて甲乙つけがたく、さらに研究・実践の分野が多様なのでひとつの尺度で優劣を判断することが難しかったからです。困難な審議をそれぞれの専門分野の知見を踏まえた広い視点から生産的に議論してくださった選考委員のみなさまと、きめ細やかなサポートをしてくださったトヨタ財団の執行部ならびにプログラムオフィサーのみなさまに感謝します。
 研究代表者が女性の申請は2件、外国籍の方が代表のものは1件と、やや少ない数字となりました。これらの比率をどう高めていくか、私たちにとっての今後の課題でもあります。研究代表者やメンバーの所属機関は、首都圏や関西圏の研究大学が多いものの、私立大学や NPO、財団法人もあり、一定の多様性を保つことはできました。
 狭き門をくぐり抜けて採択されたプロジェクトのみなさまには、失敗を恐れずに大胆に攻めていかれることを期待します。また、今回採択されたプロジェクトだけで成果を完結させるのではなく、未完成でも次につながる発展的なアウトプットも期待しています。なお、言うまでもありませんが、これは成果が出なくて良いというわけでは決してありません。その点くれぐれも誤解なきよう。
 惜しくも採択されなかった申請者のみなさまには、今回の結果であきらめるのではなく、来年度以降、再度のチャレンジを是非お願いいたします。多くの申請が、採択まで本当に紙一重でした。
 最後に、トヨタ財団の研究助成は科研費でも国プロでもありません。つまり、プロジェクトの成果を評価するのはその分野の専門家でも担当省庁でもありません。広くみなさまが究極的には成果の評価者であると私は考えています。みなさまからの厳しい御評価と、暖かい御支援のほど、今後ともなにとぞよろしくお願いいたします。

応募件数 助成件数 採択率
187件(118件) 10件(8件) 5.3%(6.8%)

※括弧内は昨年度

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