公益財団法人トヨタ財団

つながりを考える #1 星屑の私たちが、つながる理由

宇宙というスケールから考えると、人間はちっぽけな存在― シリーズ つながりを考える #1前編サイドストーリー

つながりを考える #1 前半サイドストーリー

村山 斉 × 髙野孝子 × 羽田 正

◉ 村山 斉(むらやま・ひとし)理論物理学者/カリフォルニア大学バークレー校 教授
◉ 髙野孝子(たかの・たかこ)冒険家/早稲田大学文学学術院 教授
◉ 羽田 正(はねだ・まさし)歴史学者/東京大学名誉教授/トヨタ財団 理事長

 トヨタ財団は「つながりを考える」というテーマで、2026年7月から新しい動画シリーズの製作、公開を始めた。その記念すべき1回目のテーマは「星屑の私たちが、つながる理由」だ。
 この壮大なテーマについて、歴史学者でトヨタ財団理事長を務める東京大学の羽田正名誉教授が、冒険家で早稲田大学文学学術院の髙野孝子教授と物理学者でカリフォルニア大学バークレー校の村山斉教授を迎えて鼎談を行った。
 ここでは、動画では公開できなかった未収録部分を掲載し、私たちが地球とつながる理由を考えることについてより深く考える一助にしていきたい。

執筆 ◉ 武田信晃(フリーライター)

人間は星のかけらからできている

冒頭、羽田理事長の星屑から作られたのが私たち人間であるとし、宇宙または地球、人体におけるすべての現象は、いずれ統一的な理論で説明可能になるのかという質問について、村山教授は1分23秒のあたりで、2つの意味を込めていると回答しているが、未収録の部分では、地球や惑星がどうやってできるのかについても説明をしている。

村山教授は、太陽ができるとき、「その周辺にいた塵がぐるぐると回り、回っているうちにちょっとした塵どうしの摩擦が反応を起こすことで、どんどんくっついていき、それが大きく成長した岩が地球です。その岩に私たちは住んでいます」と語る。つまり、塵が固まってできた岩が地球であり、人間は地球の現象から生まれた存在だ。そう、人間の源流をたどれば、私たちは星のかけらであることを教えてくれる。

ちなみに、人間や物質を究極まで分解していけば素粒子になるが、どうして素粒子ができたのかというのは、科学の世界でも、まだ「わかっていない」そうだ。

地球の始まりといわれるビッグバンの前には「宇宙のインフレーション」という急膨張した現象が起こったと考えられているが、最初の宇宙全体の大きさは、原子の大きさの1億分の1の1億分の1しかないと、本当に小さな世界だったそうだ。

そして「宇宙が大きくなるとき、なぜか、ある瞬間、熱くなったんですが、この仕組みもわかっていないです」。普段の生活の中では、人間は世の中の事象のほとんどを理解していると思いがちになるが、村山教授によるとわれわれは宇宙全体の約5%の物質しかわかっていないそうで、根源的なこともあまりわかっていないということを私たち人類は覚えておくべきだろう。

一方で、熱くなるという事象だけでも認めると、熱いということはエネルギーがあるという意味になり、アルベルト・アインシュタインが相対性理論から導きだした「E=mc2」によって、いろいろな物質に変わることができるようになり、素粒子が生まれたと説明している。

その素粒子がどんどんくっついていかないと原子にならないが、科学の世界においては「原子はすごく大きいもの」で、素粒子から原子ができるまでに38万年を要した。宇宙が138億年前に始まったのは知られているが、それで言えば38万年の時間とは0.000027%に過ぎない。私たち、人間の起源であるホモサピエンスは、約30万年前に誕生しているので、原子ができた歴史よりも8万年、短い。村山教授曰く(人間は)「宇宙にとって赤ちゃんの途中」だ。

また、多様性について村山教授は「同じ原子からできていても、いろんな物質の違う性質がたくさん出てくるわけです。全部、同じ物理学に基づいていても、多様性はあるわけです。それぞれの個性を持った人間がいて、それぞれの思考過程があって、その思考過程がそれぞれの人の言葉になって表現されるのは、ものすごいバラエティがあって全然不思議じゃないと思います」と語っていた。

138億年という時間をかけると、短い歴史の地球ですら、これだけの多様性がある世界になるとも言えることも、私たちは認識しておきたいところだ。

つながりを考える #1 前半サイドストーリー

地球とつながっていると感じるとき

パラシュートで北極点に降り立った髙野教授は、その時に、地球はいとおしいと感じる(10分10秒ごろ)という話をし、オーストラリアのサバンナでの体験(10分30秒ごろ)は「地球とつながっていて、自分が溶けてなくなっていく感じ」だと語っていた。

逆に、宇宙を感じる時は「月」を見ている時だそうだ。「そういう時も、本当になんか地球と1つになった感じです。自分がすごいちっぽけな地球の中の存在で、宇宙から見たらさらにさらにちっぽけな、地球なんて見えない星なのだろうと感じたりしますし、宇宙の中に入ってみたいって思ったりします(笑)」

宇宙というスケールから考えると人間はちっぽけな存在であるということは3人の共通認識だが、14分ごろに村山教授は、地球という岩に80億人が住み、殺し合ったり、地球を汚したりするのはおろかなことで、それこそ人と人のつながりが重要ではないかと語った。

それを受けて羽田理事長も「その小さい存在である自分や人間は80億人いて、勝手なことばっかりやっています。でも、それは小さい自分から見たら勝手なことなんだけど、宇宙全体からみたら、ほんとにどうでもいいようなことでけんかや殺し合ったりしてるわけでね。今いろんなことが問題になってますけど、本当にそのスケールを大きくして考えたら、結構、解決できることがあるんじゃないかなと思います」と、地球に対して謙虚な姿勢であれば、争いごとは減るのではないかという期待感を示した。

つながりを考える #1 前半サイドストーリー

人間だけでなく学術の違いでもつながることで「わかる」を増やす

宇宙を解明していくには生物、化学、物理などが必要などは言うまでもないが、村山教授は16分40秒ごろに、学問もつながることで基礎原理から周りの現象までなんとか到達しようとしているが、途中でぶつぶつと切れているので到達しきれていないと話した。

その役割分担について村山教授は「物理学の法則から、例えば、DNAがどうしてそういう性質を持つかということは計算できます。DNAは生命体の設計図になっているわけですから、DNAがどうやってタンパク質を合成して、生命を生むのかっていうところは化学の分野です。しかし、そうやってできた生物が、今度、どうしてこういう振る舞いをするのかというエリアについては、生物学の分野となります。それぞれ違う守備範囲があるという状況です」と、学問の世界でも人間と地球のつながりとは異なる別の意味のつながりがあることを説明した。

つまり、宇宙を解明していくには、異なる分野がつながって協力しあうことが重要で、それが、今わかっている5%を10%に、10%を15%にすることにつながっていく。

人類は宇宙の5%しかわかっていないということだが、私たち人間は、自分自身のことをどれだけわかっているのだろうか? 自分自身を理解し、ちっぽけな存在であるという謙虚な姿勢で物事を進めていけば、地球とつながることができ、他人とも良い関係でつながることができるのではないかと教えてくれる鼎談だった。

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