公益財団法人トヨタ財団

  • 特定課題 人口減少

2025年度 特定課題 人口減少と日本社会 選後評

選考委員長 山口慎太郎
東京大学大学院経済学研究科 教授

2年目の公募を迎えた今年度は50件の応募となり、昨年度から12件の応募増となった。公募期間は2025年9月10日から11月11日までの約2か月間であり、期間中に説明会をオンラインで3回開催したほか、個別の相談対応も実施し、応募件数の増加と共に初年度に比べて全体的に応募プロジェクトの水準も上がったことが窺えた。選考過程では、事務局のプログラムオフィサーが応募の全案件について要件や書式不備などの確認を行った上で、選考委員による書面審査と選考委員会における選考を実施し、審議の結果、6件を選出した。  

本年度の応募では、人口減少という日本社会の根幹的課題に対し、多様な切り口から意欲的な提案が寄せられた。とりわけ高い評価を得た提案に共通していたのは、①課題設定が人口減少という構造的問題と明確に結びついていること、②調査・分析・実践・政策提言までの道筋が具体的に描かれていること、③定量分析や実証的検証を通じて、得られる知見が政策や実務にどのように活かされ得るのか、その展開の方向性が見通せる形で示されている点である。加えて、既存の実績や現場との接点を有しつつも、知見を一般化し、他地域や他分野へ波及させようとする姿勢が評価された。

一方で、評価が伸びなかった提案にはいくつかの共通した課題も見られた。第一に、特定地域・特定事例に依拠しながらも、そこから得られる知見の一般化可能性や他地域への応用可能性が十分に示されていない提案が少なくなかった。もっとも、特定の地域や分野を起点とすること自体は問題ではなく、その地域や分野において既に研究・活動の実績があり、現場への深い理解を有している場合には、本プログラムの趣旨に照らしてむしろ大きな強みとなり得る。重要なのは、そこから得られる知見をどのように整理し、他地域や他分野にも示唆を与える形で提示できるかである。

第二に、調査研究そのものは丁寧であっても、その成果が制度設計や政策提言、実践的な取り組みにどのようにつながるのかが十分に示されていない提案も見受けられた。研究成果が社会の中でどのように活用され得るのか、その道筋がより明確に示されることが望まれる。

第三に、先行研究との関係整理や仮説設定・検証の枠組みが十分に示されていない提案も見られた。社会課題の解決を目指す取り組みであっても、既存の研究蓄積を踏まえ、検証可能な仮説と分析方法を明確にしたうえで知見を提示する視点は重要である。

さらに、実務への接続や社会実装を掲げながら、その実現可能性や担い手、経済的持続性についての検討が十分でない提案も散見された。また、問題意識や理念が抽象的にとどまり、なぜそれが人口減少社会において重要なのか、どのような社会問題の解決につながるのかが十分に説明されていないケースも見られた。

来年度以降の応募者には、人口減少という大きなテーマを掲げるだけでなく、①どの社会問題を、②どのようなメカニズムを通じて、③どのように改善しうるのかを具体的に示すことが求められる。

本プログラムは、人口減少社会という構造的課題に対し、新たな知見や実践モデルを提示し、社会に示唆や波及効果をもたらし得る取り組みを重視している。来年度以降の応募においても、そのような視点を踏まえた提案が寄せられることを期待したい。

応募件数 助成件数 採択率
50 6 12.0%
ページトップへ