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「外国人」と「医療」の間に、確かな入口をつくる

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寄稿
「外国人」と「医療」の間に、確かな入口をつくる
「外国人」と「医療」の間に、確かな入口をつくる

著者 ◉ 弓野 綾(横浜市寿町健康福祉交流センター診療所/東京大学大学院医学系研究科医学教育国際協力学部門)

[プログラム]
2025年度 特定課題「外国人材の受け入れと日本社会」
[助成題目]
オンライン診療×多職種ネットワークによる外国人医療アクセス改革プロジェクトこのリンクは別ウィンドウで開きます
[代表者]
弓野 綾(横浜市寿町健康福祉交流センター診療所/東京大学大学院医学系研究科医学教育国際協力学部門)

「外国人」と「医療」の間に、確かな入口をつくる

外国人と医療をつなぐ「入口」づくり

以前、私が勤務する診療所に、遠方に住む外国人の患者さんが、日本語を話せる友人に付き添われてやってきました。本人は日本語も英語も十分には話せず、診療所には医療通訳も医療ソーシャルワーカーもいません。診察の結果、治療が必要な病気が見つかりました。しかし、その病気があると働けなくなり、収入や在留資格にも影響するかもしれないといいます。付き添ってきた友人も、そこまでの支援はできません。私は患者さんの地元の病院に紹介状を書きましたが、「この人は本当に次の病院にたどり着けるだろうか。その後の治療や生活を誰が支えるのだろう」と不安が残りました。

私は総合診療医として外国人の患者さんを診療する中で、医療を必要とする外国人と、外国人に医療を届けたい医療者が、うまく出会えていないと感じてきました。そして、その間で両者をつなごうと奔走している人たちがいます。

「外国人」と「医療」の間に、確かな入口をつくる

私たちは、外国人相談窓口や国際交流協会、NPOなどで、受診先探しや予約、通訳の手配、医療制度の説明、生活上の相談などを通じて外国人を支える人たちを、このプロジェクトでは広く「支援者」と考えています。支援者からも、「診てもらえる医療機関が見つからない」「何軒も電話をかけなければならない」といった困難を聞きます。

外国人の側には、言葉や制度の壁があります。どの医療機関に行けばよいかわからない。電話をしても日本語で説明できない。一方、医療機関にも、「言葉が通じるだろうか」「診療に時間がかかるのではないか」「通訳や、医療以外の問題は誰に相談すればよいのか」という不安があります。

外国人に「もっと日本の医療制度を理解して」、医療者に「もっと頑張って受け入れて」、支援者に「何とか調整して受診先を探して」と求め続けるだけでは、この問題は解決しません。それなら、三者が無理なくつながれる、確かな医療の「入口」をつくれないか。そこから始まったのが、2026年5月にスタートしたこのプロジェクトです。

プロジェクトの2つの柱

「外国人」と「医療」の間に、確かな入口をつくる

取り組みには二つの柱があります。

一つ目は、全国どこからでも利用できる「オンライン多言語診療」です。スマートフォンなどから、多言語での予約・問診、保険証の確認、医療通訳を伴う診察、支払い、必要に応じた紹介状の作成までを一つにつなぎます。

オンラインですべてを完結させることが目的ではありません。対面での検査や治療が必要なら、患者さんの地域で受診できる医療機関を探し、実際の受診につなぎます。病状や保険、使用言語、必要な通訳などの情報を整理して紹介することで、地域の医療機関の不安や負担も減らしたいと考えています。

もう一つの柱が「多職種ネットワーク」です。外国人当事者、医師、看護師、医療通訳、外国人相談員、支援団体、研究者、ITの専門家などが、それぞれの経験や専門性を持ち寄ります。受診前には外国人コミュニティに情報を届け、診察を支え、必要なら地域の医療機関や生活・福祉の支援へつなぐ。オンライン診療という「入口」を、人と人とのネットワークで支えます。

このプロジェクトには、これまで外国人の健康や医療アクセスに取り組んできた「みんなの外国人ネットワーク(MINNA)」、「Findadoc.jp」、「ともに創る外国人のケアネットワーク(MICaN)」、日本プライマリ・ケア連合学会の外国人診療向上ワーキンググループなどのメンバーが参加しています。それぞれが持つ外国人当事者とのつながり、多言語情報、IT技術、医療、支援、教育、研究の力を持ち寄っています。

一人でできることには限界がある

「外国人」と「医療」の間に、確かな入口をつくる

プロジェクトは始まったばかりですが、多言語の予約・問診システムの開発、オンライン診療の実装準備、全国の医療者・支援者をつなぐネットワークづくりを進めています。

私が大切にしたいのは、誰か一人の「善意」や「頑張り」に依存しないことです。目の前に困っている人がいれば何とかしたいと思う人たちは、すでに各地にいます。しかし、一人の医療者、一人の支援者だけでできることには限界があります。外国人当事者も含め、それぞれが持つ知識や技術、つながりを持ち寄り、仕組みとして支えられるようにしたいと考えています。

今後はオンライン診療を実際に運用しながら、患者さんが必要な医療につながれるのか、外国人、支援者、医療者それぞれの負担を減らせるのかを検証し、仕組みを改善します。さらに持続可能な運営基盤をつくり、将来的には無保険や経済的な事情で受診が難しい人のための支払い免除診療枠を設けることも目指しています。

外国人も、支援する人も、医療者も、外国人診療で困ったときに相談できる人がいて、必要な医療や支援へ次につながっていける。そんな仕組みを全国に少しずつ広げていきたいと考えています。

国籍や言葉、住んでいる場所、お金の有無にかかわらず、誰もが必要なときに必要な医療につながれること。それは外国人だけでなく、さまざまな背景を持つ人が安心して暮らせる社会につながると考えています。

公益財団法人トヨタ財団 広報誌JOINT No. 52掲載
発行日:2026年10月20日

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