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「出会い」から生まれる豊島区の未来─としまこどもつながるプロジェクトの歩みと展望

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国内助成
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寄稿
「出会い」から生まれる豊島区の未来─としまこどもつながるプロジェクトの歩みと展望

著者 ◉ 栗林知絵子(特定非営利活動法人豊島子どもWAKUWAKUネットワーク )

[プログラム]
2022年度 国内助成プログラム
[助成題目]
としまこどもつながるプロジェクト ―地域一体で子どもを支えるプラットフォームこのリンクは別ウィンドウで開きます
[代表者]
栗林知絵子(特定非営利活動法人豊島子どもWAKUWAKUネットワーク )

「出会い」から生まれる豊島区の未来─としまこどもつながるプロジェクトの歩みと展望

活動を始めた背景

子どもたちのおかれた状況
シングルマザーのAさんは小学生の娘Bさんと2人で暮らしていますが、コロナ禍でパート先の居酒屋が休業となり収入がゼロになってしまいました。扶養手当が出ない月であり、自分の食事も制限して、子どもの食事を確保するなど、ギリギリの生活をしています。Bさんは、母親の苦労を知っているため、学校から持参を求められた必要品について言い出せず、またいつも忙しそうな母親に宿題の分からないことも聞けないでいます。しかし、Aさんの実家も遠方で、Bさんには地域に相談できる人はいません。

豊島区においては、約2割の子どもたちが生活困難層にあり、ひとり親世帯の約半数が生活困難層にあります。また、親・子どもともに相談する先がないと答えるなど孤立傾向にあります(豊島区の小学5年生の約 7 人に1人が相談先がないと回答し、親も約10%弱が相談先がないと回答)(豊島区「子どもの生活実態に関する分析 報告書 -東京都子供の生活 実態調査データを用いて」平成30年3月、首都大学東京 子ども・若者貧困研究センター) 。

地域貢献メッセ
地域貢献メッセ

地域で暮らす大人の状況
CさんはAさんたちと同じ地域にオフィスのある会社に勤務する会社員ですが、いつも通勤時に道ですれ違う小学生Bさんのことが気にかかっています。暗い顔をして下を向いて歩いており、着ている服もいつも同じもののように見えます。心配ですが、なんと声をかけて良いかは分からず日々が過ぎています。

としまこどもつながるプロジェクトへ
このような方々を念頭に“無関心(支援活動を知らない)”を“関心(身近に活動があることを知る)”へ、“関心”を“行動”に、“当事者”を“支援者”へ変えていくプラットフォームを構築し、地域一体となって、こども・子育て世帯を支え、暮らしやすい“まち”とするために本プロジェクトを立ち上げました。実際に困難な状態にある子どもたちの支援活動をするとともに、同時に子どもの貧困・孤立の認知を広めて関心を醸成することで多くの人の参加を促すプラットフォームを作ることを目指し、同じ問題意識をもつ企業、NPO、個人などが集まり「としまこどもつながるプロジェクト」を始動しました。

具体的には地域の子どものために活動を希望する、もしくはすでに活動している多様な関係者がテーマを決めて話し合う「としまこどもつながる交流会」(以下、つながる交流会)の開催、地域での認知向上を目指した情報発信を行う「つながるメディア」の運営、そして企業とNPOをマッチングするなどの「つながるお手伝い」の3つを柱として活動してきました。これらを通じて地域の中で子どものことを思う人たちが集まり、「としまこども団」と名づけ、素敵なロゴを作成し、広く子どものために動く人=団員の輪を広げていく取り組みを続けてきました。以下、その活動をお伝えしていきます。

「つながる交流会」での議論と取り組みの深化

つながる交流会
つながる交流会

この会議は、2022年の事業開始から全9回、260人の参加がありました。子どもの不登校、外国にルーツを持つ子ども、フードバンク等の食支援のあり方などのテーマで発表者の発題、参加者による議論を大切にしてきました。単なる情報交換の場を超えて、具体的なアイディアや活動が生まれてくる場となっています。

たとえば、「食」をテーマとした会議では企業から実際に行っている食を通じた子どもへの支援についての発表がありました。そこで、不登校の子ども支援関係者から「支援対象に不登校で自宅にいる子どもも対象に入れてはどうか」という提案があり、企業担当者が新たな気づきを得るということがありました。

また別の会議ではフードバンク支援団体や、豊島区民社会福祉協議会なども参加して発表を行った後に、食の支援を広げるための具体的な方策について議論が深まりました。責任をもって団体を運営する人がいたら、予算や場所も提供できるのに……という議論の中で、その場に参加していた地域に住む30代の若者が「自分が代表をやります」と手を挙げたことで、一気に実現へと動き出す、ということがありました。

また、外国にルーツを持つ子どもについては2回にわたり「つながる会議」にて議論がなされました。中学校のPTA関係者や地域の個人支援者、社会福祉協議会、NPOなど多様な関係者が参加し、支援の必要性について意見が交わされました。この会議での議論も踏まえ、豊島区において学校や関係機関等と連携して適切な支援につなげる専門家『多文化キッズコーディネーター』の予算化へとつながりました。

多様な関係者の参画

本プロジェクトのもう一つの大きな成果は、地域におけるさまざまな関係者の参画を引き出しているところです。事務局として民間企業やロータリークラブ関係者、地元の法律事務所、NPOが加わり、専門性、場所、時間の提供などそれぞれが持ち寄れるものを集め、子どものためのプラットフォーム、「こども団」を構成しています。

助成事業としては一区切りとなりましたが、引き続き、多くの「団員」とともに、地域で子どもが誰も取り残されず、安心して育つことができるための活動を続けていきたいと考えています。

公益財団法人トヨタ財団 広報誌JOINT No. 51掲載
発行日:2026年4月16日

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