国内助成
contribution
寄稿
著者◉ 後藤忍(公益社団法人Civic Force プログラムコーディネーター)
- [助成プログラム]
- 2021年度 国内助成プログラム
- [助成題目]
- 企業のものとサービスが支援団体とつながる ―デジタルプラットフォームサービスの創出
- [代表者]
- 根木佳織(公益社団法人Civic Force )
貧困や困難な状況から抜け出せる人が増えることを目指して
災害対応プラットフォームの仕組みをデジタル化 ー 平時からの活用
災害時には多くの企業が自社の持つ商品やサービスを被災した方の役に立てたいと考えます。私どもシビックフォースは被災地に足を運び、被災地のニーズや地域で活動する支援団体を調査し、企業の皆さまに情報を提供、支援内容を調整することで、被災地のニーズにあった物資の提供やコミュニティの再生など地域の復旧・復興を支援する活動を行ってきました。
こうした災害時の仕組みをベースとして、デジタル技術を活用し、物資やサービスなどを提供できる企業と各地で活動する支援団体による民間の支援ネットワーク、地域ネットワークをデジタル上に構築したのがデジタルプラットフォーム「Good Links」です。このプラットフォームを平時から多くの企業・支援団体に公開し活用いただくことで、社会が今後直面する困難な状況にも対応できる仕組みを目指しています。
シビックフォースのメンバーが中心となり、日本マイクロソフト株式会社がクラウド寄贈、並びに、専門的な技術や知見を活かした社員によるプロボノ、またヤフー株式会社は、社員によるプロボノで運用開始後の改修サポートに協力をいただいています。
社会資源が循環するプラットフォームを目指す
災害分野で活動するシビックフォースですが、平時にも企業の皆さまから、自社の商品やサービスを活用できないかというお話をいただくことがあります。衣料品や生活用品の中には、外箱の破損や過剰在庫など品質には問題がないにも関わらず販売ができず、廃棄せざるを得ない商品もあり、廃棄ロス削減の観点から相談を受けることもあります。こうした商品は災害時に備えて備蓄をしたり、生活にお困りの方を支援する団体にご提供したり、できるだけ有効活用されるよう調整を図っています。
特に2020年以降、新型コロナウイルスの感染拡大により、経済活動が大きく制限されました。これに伴い、非正規雇用の労働者が職を失うなど、特に低所得者が多大な影響を受けています。こうした状況を受けて、私たちは2020年から、被災地で復興支援に取り組む団体や、生活困窮者を支援する団体に、災害用に備蓄していたマスクやおむつ、衣料品などの提供を開始しました。
私どもは社会資源の有効活用を通じた、社会的・経済的に困窮する方々の生活の質の向上を目標に掲げ、企業が提供できる商品を、支援団体を通じて必要な方々に届けると同時に、人とのつながりを絶やさない支援の仕組みを創ることを目的として、次の3つの活動を行っています。
[1]デジタルプラットフォーム「Good Links」の整備
[2]「Good Links」への企業、行政、支援団体の参加登録促進
[3]「Good Links」を通じた支援の実施
助成1年目は、基盤となる「Good Links」を整備し、2022年7月にリリースしました。9月末までに企業・支援団体あわせて20団体が登録しています。
支援団体を支援する
新型コロナウイルスによる貧困問題の拡大、社会的孤立、頻発・激甚化する災害など社会課題が複雑化・多様化するなか、公的支援で対応しきれない分野の課題に、各種民間の支援団体が対応しているのが現状です。しかしながら、多くの支援団体は、慢性的な人的・物的、資金的リソースの不足に直面しています。
物を提供するだけでは、支援を必要とする方の根本的な課題の解決にはつながりません。それでも支援団体の多くは、食料や物資の配布をきっかけとして、課題の把握や相談支援、孤立の解消につなげています。そんな支援団体を支援することで、人とのつながりをつくり、必要な支援制度や関係機関につながることが期待できます。
枠組みの重要性
Good Linksという実効性のある枠組みができたことで、さまざまな業種の企業や活動分野が異なる支援団体が参加できるようになりました。多様な主体が集まるプラットフォームによって、これまでつながりのなかった者同士が分野や地域を超えてつながり、助けあえる関係性ができはじめています。
こうしたプラットフォームに参加する企業や団体の意思はさまざまです。主体性を尊重するとともに、限られた資源を共有するための公平性を担保し、興味・関心が近い企業と支援団体をうまくマッチングする枠組みにしていくことが重要です。
Good Linksでは、提供者が提供したい物資を登録すると、複数の団体が支援の受け取りの申し込みができ、その中から「提供者が」希望する使いみちに近い支援先を選ぶことができます。また、その逆の方法として支援団体のリクエストに対して、提供できる複数の企業・団体が提供の申し込みができ、その中から一番使いみちにあった申し出を選ぶことができます。
その他にも、プラットフォームの信頼性を担保するため、信頼のおける企業や団体から招待された企業や団体、事務局の審査に通った団体のみが会員登録できる招待制、提供したい物資・サービスの情報を、特定の団体やプロジェクトにしか公開したくない場合などに公開範囲を設定できる機能などが備わっています。
将来的には、Good Linksの仕組みを通じて、各地に社会資源を活用したネットワークや物資の輸送網が形成され、物資以外にも、移動手段や不動産資産を活用した支援や就労支援、職業訓練など、あらゆるものやサービスの組み合わせによる支援が実現し、貧困や困難な状況から抜け出せる人が増加することを目指しています。
会員登録、利用は無料ですので、この記事をお読みの皆さまにもぜひ、Good Linksをご活用いただければ幸いです。
公益財団法人トヨタ財団 広報誌JOINT No.41掲載
発行日:2023年1月24日