外国人材
contribution
寄稿
著者 ◉ 福田浩之(認定特定非営利活動法人アイキャン)
- [プログラム]
- 2025年度 外国人材の受入れと日本社会
- [助成題目]
- 移民2世のキャリア選択肢の拡大と地域産業のデジタル業務外部化による地域活性化 ―小口業務を核とした実装モデル―

- [代表者]
- 鈴木真帆(認定特定非営利活動法人アイキャン)
外国ルーツの若者の将来の選択肢を広げる──若者の「得意」と地域企業の仕事をつなぐ仕組みづくり──
外国ルーツの若者の心に残った言葉
「自分も派遣会社かな」
岐阜県可児市で開いている若者の居場所で、将来の仕事について話していたとき、ある外国ルーツの若者が口にした言葉です。この一言が、本プロジェクトを立ち上げるきっかけの一つとなりました。岐阜県美濃加茂市と可児市は、人材派遣会社を介して非正規雇用で働く外国人住民が多く、日系ブラジル人や日系フィリピン人が多く暮らしている地域です。
若者の言葉が心に残ったのは、「自分もそうなるのかな」という響きがあったからです。他にどのような仕事があるのかを知り、実際に挑戦して、自分に合う道を考えたうえでの発言だったのでしょうか。それとも、身近に見える仕事が限られ、自分の将来が既に決まっているように感じていたのでしょうか。
外国ルーツの若者の中には、進路や仕事について相談できる大人が身近に少ない人もいます。家庭の経済状況から早く収入を得ることを期待され、進学を断念する若者もいます。家庭内の通訳やきょうだいの世話を担い、学校外の活動に参加する余裕がない場合もあります。また、日本語で提供される進路情報に十分にアクセスできないことも、選択肢を狭める要因となっています。そこには、若者自身の努力だけでは越えられない壁があると感じました。
若者の力と地域の仕事が、まだ出会えていない

外国ルーツの若者たちにも、それぞれ関心のあることや得意なことがあります。居場所で出会う若者たちは、写真や動画を撮影・編集し、SNSで発信しています。日本語と母語、時には英語を使い、異なる言語や文化の間をつなぐこともできます。
しかし、こうした関心や得意なことが、将来の仕事や進路につながる力として、若者自身や周囲の大人に認識される機会は多くありません。仕事として試す機会や、成果について評価を受ける機会がなければ、本人も自分の力に気づきにくく、企業も若者が持つ力を知ることができません。
一方、地域企業にも、利益向上や人材確保、企業イメージの向上につながる可能性がありながら、十分に対応できていない業務があります。SNSによる情報発信、簡単な画像・動画の編集、データ整理、ウェブサイトの更新、多言語による案内や広報などです。また、地域には学校、行政、NPO、企業、外国ルーツの先輩など、若者の挑戦を支えられる人や組織も存在します。つまり、若者に力がなく、地域に資源がないのではありません。若者が持つ関心や得意なこと、企業が抱える仕事、それを支える人や組織を、実際の挑戦へと結びつける仕組みが不足しているのです。その間に橋を架けることができれば、若者の「好き」や「得意」は、誰かの役に立つ仕事になり、次の進路を考える具体的な手掛かりにもなります。
小さな仕事を、最初の一歩に

こうした問題意識から、外国ルーツの若者と地域企業をつなぐプロジェクトを開始しました。本プロジェクトでは、調査、仕事づくり、実践、地域で継続できる仕組みづくりを一つの流れとして進めていきます。
まず、若者、家族、学校、企業などへの聞き取りを行い、若者の選択肢がどのような条件によって狭められているのかを明らかにします。日本語能力や学力だけでなく、進路情報へのアクセス、家庭で担っている役割、身近なロールモデルの有無、企業側の受入れ体制などにも目を向けます。
次に、地域企業を訪問し、利益の向上や人材確保、企業イメージの向上につながる可能性がありながら、人材不足やデジタル分野のノウハウ不足によって着手できていない業務を把握します。そのうえで、SNSによる広報、画像・動画の編集、データ整理などを、若者が挑戦できる小口業務としてどのように切り出し、外部に委託できるかを企業と協議します。併せて、業務の手順、成果物の基準、報酬を明確にします。
若者は、学校や現在の仕事と両立できる夜間や週末に、必要な技術と仕事の進め方を学びます。外国ルーツの先輩や専門家が伴走し、研修後は5人のチームで、地域企業から小口業務を受注します。
本プロジェクトでは、小さな一歩から始め、報酬を伴う仕事として取り組む経験を積み重ねることを重視します。誰かに必要とされ、期限や基準を意識して成果を出し、評価を受ける経験を通して、若者が自分の力と課題を捉えられるようにします。完成した成果物や企業からの評価は、本人の実績として残し、次の受注、就職、進学、新たな挑戦へとつなげていきます。また、仕事の切り出し方、依頼の手順、評価の方法を整理し、他の企業、自治体でも活用できる形式にまとめます。
「選べる未来」を地域でつくる
本プロジェクトが目指すのは、外国ルーツの若者のキャリアの選択肢を広げる仕組みを地域につくり、他地域にも展開できるモデルとして確立することです。
そのためには、アイキャンだけでなく、地域のさまざまな人や組織との協働が欠かせません。企業とは、必要でありながら人手が足りず、若者が取り組める仕事を一緒に探していきます。学校や行政とは、進路やキャリアに関する情報を若者へ届け、参加につなげる方法を考えます。地域で働く外国ルーツの先輩とは、自らの経験を伝え、若者の挑戦に伴走する役割を共に担っていきます。
実践を重ねる中で、企業からの継続的な受注を増やし、若者の成果や評価が次の仕事や進路につながる流れをつくります。さらに、地域で蓄積したノウハウを他地域にも共有し、それぞれの地域で若者と仕事をつなぐ仕組みが生まれることを目指します。
いつか、「自分も派遣会社かな」と話した若者が、「こんな仕事もある。自分はこれをやってみたい」と、自分の未来を自分の言葉で語れるようになってほしいと考えています。そのために必要な機会を、若者自身の努力だけに委ねるのではなく、地域全体でつくっていきます。若者の中にすでにある力と、地域にある仕事や人をつなぎ、「決められた道」ではなく「自分で選べる道」を一つずつ増やしていきます。それが、本プロジェクトを通して実現したい地域の姿です。
