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選考委員長 城山 英明
東京大学大学院法学政治学研究科 教授

研究助成プログラムの選考について

トヨタ財団研究助成プログラムは 「社会の新たな価値の創出をめざして」というテーマを掲げてきました。日本および世界において、これからの社会が対応を迫られる困難な課題に私たちはどのよう向き合えばいか、その基本的な考え方や方法論を原理的に探究し、社会の新たな価値創出をめざす意欲的な研究者を応援することが、本プログラムの目的です。

高齢化やグローバル化への対応といった課題に見られるように、現在の社会には様々な課題が存在しています。そして、様々な社会集団、企業、政府は、これらの顕在化した課題への短期的対応に日々迫られています。しかし、この研究助成プログラムにおいては、そのような顕在化した課題に対応するだけではなく、まだよく見えない潜在的課題を発掘し、それらに向き合う新たな社会的価値を見据えることが期待されています。潜在的課題を発掘するためには、その兆しとなる様々な現場を認識することがその第一歩となります。また、新たな社会的価値を見据えるには、そのような新たな社会的価値を孕みつつある社会における新たな試みに寄り添う必要があります。そして、潜在的課題を発掘し、新たな社会的価値を見据えるには、個々の研究プロジェクトにおいて、研究者と実践者が連携するとともに、多様な視角を持つ様々な研究者が協力することが重要です。今回採択されたプロジェクトは、対象となる現場や研究チームの構成・規模は異なるものの、このような方向性を基本的に共有していると思いますが、より骨太な研究に展開させていくことが期待されます。

本年度の募集においては、助成開始時の代表者の年齢に関して、45歳以下という条件を付けさせていただきました。これは、多様な年齢層の研究参加を排除するものではありません。むしろ、多様な観点をもたらすためには、多様な年齢層の参加は望ましいものです。他方、今後の社会における潜在的課題を発掘し、新たな社会的価値の方向性を明らかにしていくためには、若手研究者の問題意識を深化させるとともに、研究マネジメント能力を高めていくことは必須なことであると考えられます。その結果、今回、選考されたプロジェクトの代表者の平均年齢は38歳程度となりました。これらの研究リーダーの方々に、様々なチャレンジを経験しつつ、知的起業家として成長していっていただくことを期待したいと思います。

本年度においては、最終的に、応募総数361件の中から計12件のプロジェクトが採択されました。原則として共同研究を対象とすることとし、また、研究助成総額が減少した結果、従来に比べて採択件数はかなり減少することになりましたが、多様なプロジェクトを採択することができました。以下では、いくつかの興味深いプロジェクトの例を紹介したいと思います。



D18-R-0122 米澤  旦(明治学院大学社会学部 准教授)

「社会的企業の生態系における組織の持続性と担い手のキャリアの経済社会学的研究:日韓4都市のネットワーク比較分析を通じて」

本プロジェクトは、社会的企業という重要なテーマに関して、その生態系を実証的に明らかにして、今後の新たな社会的価値を生み出す基盤を構築しようとする興味深い研究です。そして、実質的に協働できる国際的チームによる国際比較研究としても期待できるものとなっています。



D18-R-0136 國分功一郎(東京工業大学リベラルアーツ研究教育院 教授)

「哲学、医学、精神分析の融合による自閉症の学際的研究──新しいダイバーシティ概念の創造を目指して」

自閉症をめぐって、哲学、医学、精神分析という多様な視点から取り組む興味深い学際的研究です。このような研究を通して、新たな価値の方向性を示すとともに、その結果を社会に発信することが期待されます。



D18-R-0281 ロウズ・ローニング(南アフリカケープタウン大学アフリカ・ジェンダー研究・人類

学・言語学部 博士研究員)

「その後の世代:ルワンダ大虐殺後の親族・家族関係の再構築」

ジェノサイドを経験したルワンダにおいて、性的暴力の結果生まれた子供たちがどのように家族・親族に受け入れられたのか、あるいは受け入れられなかったのかという現場の分析を通して、人間がどのように暴力の経験を受けとめるのか、また、家族・親族とは何かという基本的な課題に取り組もうとする研究です。採択案件の大部分を共同研究が占める中で、本研究は萌芽的な個人研究として、視角は限定されるものの、切り口の鋭い研究となっています。


応募件数 助成件数 採択率
361件(393件) 12件(13件) 3.3%(3.3%)
※括弧内は昨年度の「個人研究」
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