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トヨタ財団について

理事長ごあいさつ

 先見性を特徴の一つとするトヨタ財団の多彩な助成事業は、その時々の状況に応じて不断に変化してゆきます。この場を借りて、2020年度の主な助成事業を紹介させて頂きます。まず、今年で3年目を迎える特定課題プログラムです。このプログラムは、「時代の喫緊な課題に焦点を絞り、波及効果を強め、課題解決への道筋を探る」という考え方に基づいて立ち上げられたものです。今年度は、昨年度に引き続き「先端技術と共創する新たな人間社会」、「外国人材の受け入れと日本社会」という二つの重要な今日的課題について、プロジェクトの募集を行います。
 次に、「国内助成プログラム」では、地域活性化と人材育成に重点を置きながら、持続可能なコミュニティの実現を目指すプロジェクトを支援します。「国際助成プログラム」については、アジア諸国の共通課題に関する相互の学びあいという枠組みは保ちつつ、テーマの絞り込みは行わないことにしました。時代の流れに敏感で良質のプロジェクトを柔軟に考案して頂けるのではないかと期待しています。
 一方、「研究助成プログラム」については、今年度の公募を休止します。過去9年間にわたって掲げてきた「社会の新たな価値の創出をめざして」というテーマのエッジが失われてきたのではないかと感じるからです。長い歴史を誇る当財団の研究助成プログラムですが、圧倒的な存在感を有する日本学術振興会(JSPS)や科学技術振興機構(JST)による公的助成と比べると、残念ながら、規模の点では目立ちません。これらの大きな助成プログラムとどう差別化を図るかは大きな課題です。そこで、ここで一旦立ち止まって、当財団における研究助成の目的や意義をじっくりと検討してみることにしました。次年度には新たなコンセプトに基づく研究助成プログラムを提案したいと考えています。

 今年度からの新たな試みが一つあります。トヨタ財団の創立記念日にあたる10月15日前後に開催を予定する「The Toyota Foundation's Day」(トヨタ財団の日)がそれです。社会の各方面の方々とお話ししていると、「トヨタ財団は極めて意義の大きな活動をされているのに、世の中ではあまり知られていませんね」という言葉を耳にすることがあります。当財団が取り組んでいるさまざまな助成活動を一人でも多くの方々に直接お伝えすべく、今年度前半はこの催しの準備に力を入れてゆきます。また、この機会を皆様方からの貴重な助言を頂く場としても活用してゆく所存です。

 昨今の新型コロナウイルス流行が引き起こした世界的な危機は、期せずしていくつかの現代世界の特徴を露呈させました。一つは言うまでもなくグローバル化の進展です。中国武漢に始まった感染が、瞬く間に世界的な規模に広がったことは、その雄弁な証左です。また、経済や社会の仕組みがグローバル化を条件として出来上がっているということや、ほとんどすべての社会活動は人が集まることを前提として設計されているといったことなども今回の危機であらためて明らかになったことです。
 ウイルスの流行を食い止めるため、世界各国で、人の移動を制限する措置がとられています。この動きは、ヒト、モノ、情報の移動と集合を前提とする現代の経済や社会の基本的構造に対する重大な挑戦です。見方を変えれば、政治だけは必ずしもグローバル化してはいなかったのです。いずれにせよ、このような施策によって、国際的な移動に関わる航空機、観光などのさまざまな業界、人の集合に関わる各種イベント関連、飲食店、小売りなどの業界が、甚大な経済的損失を被っています。間接的な影響を蒙る業界は枚挙にいとまがありません。たとえば、アメリカの大学の友人によると、外国人留学生の授業料に依存する多くの大学が、経営難に陥るだろうとのことです。
 今回の危機がどのような形で収束するのか、現段階ではまだ見通すことができません。しかし、はっきりしていることは、コロナウイルスの脅威が去った世界は、ウイルスが現れる以前と同じではないということです。重視される価値が変わり新しく生まれ拡大する事業がある一方で、これまでの常識が覆り、時代に合わなくなった職業や業種が消えてゆくでしょう。人と人、集団と集団が取り結ぶ関係が変化し、それがひいては経済や社会の基本的構造を変えてゆくかもしれません。感染を防ぐために奨励されているテレ・ワークや在宅勤務、オンラインでの会議や講義などは、その先駆けであるように見えます。

 公募スケジュールの関係で、今年度は間に合いませんでしたが、来年度は国内、国際両プログラムを設計するに際して、コロナウイルス後の世界認識を組み込むことが求められるでしょう。トヨタ財団は、常に時代の変化の兆しに目を注ぎ、その時々に必要となる助成プログラムを準備し提案してゆきたいと考えます。
 引き続き皆さまのご指導とご支援を心よりお願い申し上げます。


2020年4月
公益財団法人 トヨタ財団
理事長 羽田 正

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