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トヨタNPOカレッジ「カイケツ」

トヨタNPOカレッジ 「カイケツ」第3期第6回成果発表会レポート

情報掲載日:2019年1月9日


「カイケツ」
第3期
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「問題解決」でNPOマネジメントの底上げを

第3期「トヨタNPOカレッジ カイケツ」に参加した受講生と講師陣

トヨタ財団は11月27日、トヨタ自動車の問題解決手法をNPO向けに伝える第3期「トヨタNPOカレッジ カイケツ」の成果報告会をトヨタ自動車東京本社で開催しました。NPOの代表者は、それぞれのテーマに対する「問題解決」のステップを「A3資料1枚」にまとめて発表。トヨタ財団の小平信因会長は「企業でもNPOでも、効果的に成果を上げることが大切。カイケツを通じてNPO全体の底上げにつなげたい」と挨拶しました。(オルタナ編集部=吉田広子)

トヨタ財団は、助成金を拠出するだけでなく、NPOに問題解決力を身に付けてもらうことを目的に、2016年から「トヨタNPOカレッジ カイケツ」を実施しています。

今期は17団体25人が参加。それぞれ掲げたテーマに対し、約7カ月間をかけてトヨタ式「問題解決」を実践しました。

トヨタ財団の小平信因会長は成果発表会の冒頭で、「トヨタの問題解決は、日々直面する課題に対し、生産性を高め、効果を出していく取り組みのなかで生み出されました。NPOの皆さんが身に付けた問題解決という基本的な考え方、マネジメントの手法を日々の業務で実践し、ほかの人にも広げてほしい。カイケツを通じてNPO全体の底上げにつながれば」と挨拶しました。

団体の社会的意義を再確認

写真 Aグループ(古谷健夫講師)

成果発表会では、グループ内での発表後、グループごとに代表を選出し、全体発表を行いました。

代表には、人材育成ゆふいん財団(大分県由布市)理事の大澤直彦さん(Aグループ)、NPO法人武尊根(ほたかね)BASE(群馬県片品村)の笹子和希さん(Bグループ)、特定非営利活動法人ブックスタート(東京・新宿)統括マネージャーの安井真知子さん(Cグループ)、NPO法人Co.to.hana(コトハナ/大阪市)の田中佐也加さん(Dグループ)が選ばれました。

ゆふいん財団のテーマは「成り行き任せにせず、環境変化に対応できる『国際交流事業』の運営の仕組みづくり」。組織が「メタボ化」するなかで、韓国・水原市との国際交流事業の評価指標を見直し、財団の社会的役割を再認識しました。

写真 Bグループ(鈴木直人講師)

武尊根BASEは、廃校になった武尊根小学校を舞台に、アウトドア体験や武尊根まつりなどを展開しています。活動を始めて2年が経ちますが、行政や地域住民と対話する場を積極的に設けてこなかったといいます。そこで、「地区の将来像共有システム構築に向けた三者協働のための場をつくる」をテーマに掲げ、行政、地域住民、NPOの三者が地区のありたい姿について議論できる場づくりに取り組みました。

今期から参加し、Bグループを担当した鈴木直人講師(日野自動車TQM推進室主査)は、「NPOの皆さんの成長をとても実感しています。『困っている人の役に立ちたい』という志の強さを感じ、頭が下がる思いでした。スケールが大きな問題に取り組むからこそ、問題の整理が大切」と話しています。

引きこもっていた人の生きがいにも

写真 Cグループ(中野昭男講師)

「事務作業に追われ、職員がやりたいことに時間を割けていませんでした」。こう話すのは、特定非営利活動法人ブックスタート(東京・新宿)統括マネージャーの安井真知子さんです。

職員の協力のもと、事務作業にかかる時間を計測し、その削減に取り組みました。書式を改訂したり、提出期限を設定したりしたことで、一人あたり1時間程度の削減につながり、その分、企画などに時間を割けるようになりました。

「現状を定量的に把握することで、問題が整理されることを実感しました。理想と現実のギャップ(問題)の大きなところから着手していくという考え方も勉強になりました」(安井さん)

写真 Dグループ(細見純子講師)

NPO法人Co.to.hana(コトハナ/大阪市)は、大阪市浪速区で、地域住民の「得意」と困っている人をマッチングする「ひとしごと館」を運営しています。

ですが、そのマッチング率は伸び悩み、活動会員の得意を生かし切れていない現状がありました。そこで、「マッチングされる会員数を13人から23人にする」ことをテーマに掲げました。会員紹介の発信強化や、包丁研ぎ講座やアロマハンドケア講座などを実施した結果、18人がひとしごとに関われている状態に改善されました。

同NPOの田中さんは「脳梗塞を患い、自宅に引きこもってしまった男性が、医者に連れられて『ひとしごと館』に来ました。包丁研ぎの仕事をするようになり、感謝や謝金といった反応を得て、生きがいを取り戻したようです。介護業界でも、リハビリ終了後にどう活動するかが、問題になっています。地域とのつながりを取り戻す取り組みを続けていきたい」と抱負を語りました。

スポーツの楽しさを取り戻してほしい

「区民のための地域密着型クラブづくり」を掲げ、フットサルスクールを運営するのは、東海道品川宿スポーツクラブ(東京・品川)です。

運営の安定化を目指し、「フットサルスクール小学生以下の会員増加」をテーマに掲げました。マネージャーの竹中茂雄さんは、「これまでは何か問題を見つけると、新しいサービスのアイデアが次々に浮かんで、問題についてじっくりと考えることがありませんでした。問題解決のプロセスを通じて、問題を整理して考える習慣ができました」と手応えを語ります。

さらに「カイケツを通じて、自分たちが実現したいことやほかのクラブとの差別化もできた」と言います。

竹中さんは「競技志向が強いクラブでは、ミスをするたびに罵声を浴びるなど、厳しい指導も多い。当クラブにきて『初めてほめられた』という子もいます。プロを目指してサッカー漬けの生活を送る家族も多いですが、一度離脱するとサッカーから離れてしまう。競技者を目指す人もそうでない人も楽しめるスポーツクラブにしたい」と意気込みました。

中野昭男講師(のぞみ経営研究所所長)は「すぐに成果は出ません。ありたい姿を描き、現状把握を行い、導き出された対策を試してみる。決めたらまずは完結させることが大切。そうして次に進んでいってほしい」と激励しました。

問題解決は「働く喜び」に

写真 トヨタ自動車で問題解決に取り組んできた古谷健夫講師

「問題解決」はPDCA(方針管理)・SDCA(日常管理)そのもので、シンプルなステップです。しかし、実践するのはそう簡単ではありません。

多くの受講生は、特に現状の姿を客観的かつ定量的に認識する「現状把握」に難しさを感じていたようです。なぜなら、関係者へのヒアリングなどを通して事実やデータを集め、実態にせまることが難しいからです。現状把握が正しくできないと、対策が浮いてしまうことになってしまいます。

細見純子講師(中部品質管理協会企画部次長)は、「問題が整理されてくると、つい対策のアイデアに意識が向いてしまいます。思い込みを捨ててじっくりと現状に向き合い、関係者と対話しながら『問題解決』を進めてほしい。『現状把握』と『対策立案』がつながり、行き来できる状態になっていることが大切」と強調しました。

「『問題解決』の実践は、『働く喜び』につながる」

古谷健夫講師(トヨタ自動車業務品質改善部主査)は、問題解決が目指す姿をこう表現します。

「『改善』『イノベーション』などいろいろ言葉はありますが、ベースは『問題解決』と同じ。企業もNPOも行政も、お客さんの声を聴き、ニーズに応え、価値を創造する。さらにそれを保証し続けることが組織の成長につながっていくのです」(古谷講師)

古谷講師は「自ら考え、やってみる。『問題解決』は、一人ひとりの能力向上と成長を実感できるツール。職場の活性化にもつながります。働く喜びを味わってもらいながら、NPOも成長して、日本社会がより良くなるように期待しています」と締めくくりました。

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