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助成対象者からの寄稿

ティーガーデンから茶料理まで。お茶は飲むだけじゃない!

写真1. タイ・チェンライ県プラヤプラー村の茶畑風景。 写真1. タイ・チェンライ県プラヤプラー村の茶畑風景。

著者◉ アムナー・カウクルアムアン
(静岡県立大学経営情報学部准教授・大学院経営情報イノベーション研究科 准教授)

[助成プログラム]
2020年度 国際助成プログラム
[助成題目]
ガストロノミーティーツーリズムによる茶産業コミュニティの活性化このリンクは別ウィンドウで開きます
[代表者]
アムナー・カウクルアムアン(静岡県立大学経営情報学部准教授・大学院経営情報イノベーション研究科 准教授)


この原稿は英語原文を日本語訳したものです。原文はこちらからご覧ください。
Original English article is available here

ティーガーデンから茶料理まで。お茶は飲むだけじゃない!

お茶について考えるとき、まず頭に浮かぶのは飲み物としてのイメージだろう。お茶は水に次いで最もよく飲まれている飲料で、30億人以上の人々が日常的にお茶を飲んでいる。しかし料理としてのお茶のイメージは、お茶を栽培している60超の国でもほとんどない。

21世紀初頭から茶産業は世界的に急速に発展を遂げ、世界各地で茶畑が拡大した。そのような動きにも関わらず、国際的なティーツーリズム(お茶や茶文化を対象とした観光)は未だに発展初期段階であり、茶製品に付加価値を与え、茶栽培地コミュニティーを支援するガストロノミーツーリズム(その土地の気候風土が生んだ食材・習慣・伝統・歴史などによって育まれた食を楽しみ、その土地の食文化に触れることを目的としたツーリズム)は、特にこれからの発展が期待されている。

ガストロノミーとは、良質の食材を調理し食するアート(技法)である。そこには文化と食べ物の関係性についての研究も含まれる。ガストロノミーツーリズムでは、観光客は食べ物や食に関する活動を体験する。伝統に根差し、本格的かつ目新しい料理を食することに加え、地元の生産者を訪問したり、フードフェスティバルに参加したり、料理教室に参加することも含まれる。国連世界観光機関 (UNWTO)によると、ガストロノミーツーリズムには以下のメリットがあるとされる。

1.地域の差別化と独特性の確立
2.観光客に対する新たな価値と経験の提供
3.低開発地域や小規模村落、施設のない地域における観光促進
4.地域への収入増と観光客の再訪(リピーター客)促進

本プロジェクトが目指すのは、茶栽培を行う村落がガストロノミーと観光事業を活用し、茶栽培事業を発展させコミュニティを再活性化することである。このタイと日本のガストロノミーティーツーリズム交流プロジェクトでは、このアイデアを世界の他の茶産業コミュニティにも伝えるためのモデルづくりを試みる。タイと日本はどちらもお茶の低価格化や若い茶農家不足による茶産業および茶栽培コミュニティの衰退に直面している。タイ北部では、観光を通じた収入増やお茶の高付加価値化を目指す一方、日本では、少子高齢化により国内観光および茶栽培コミュニティは衰退の一途を辿っている。

写真2. 静岡県梅ヶ島の高地茶栽培地域。 写真2. 静岡県梅ヶ島の高地茶栽培地域。

近年、地域のアイデンティティ強化、経済再活性化、伝統の継承といった理由から、ガストロノミーツーリズムへの関心が高まっている。世界各地の観光地は、観光客が旅行先を決める際の大きな要因となる食事メニューの開発に力を入れている。お茶は、ガストロノミーを経験できる農産品の一つであり、地元の観光事業と農村コミュニティを再活性化するツールにもなり得る。ガストロノミーティーツーリズムでは、衰退する茶栽培コミュニティにおいて、茶文化を観光商品として活用するのである。このプロジェクトでは、茶栽培コミュニティの零細事業者のためのお茶関連商品のアイデアを交換することを目指し、ケース・スタディの場として、タイ北部に位置するチェンライ県プラヤプラー村(写真1)および静岡県梅ヶ島(写真2)を選定した。

梅ヶ島は、静岡県内の高地に位置する茶栽培コミュニティである。この地域は100年以上にわたって温泉観光から利益を得てきたが、近年は日本の国内観光が低迷しているため、外国人観光客の誘致が求められている。プロジェクトの一環として、梅ヶ島はタイ人旅行者向けのガストロノミーティーツーリズムによる観光と茶産業の再活性化を図っている。一方、高地にある茶栽培の村であるチェンラーイ県プラヤプラー村は観光地化を始めたばかりで、タイの国内観光客の誘致を目指しており、梅ヶ島が観光ビジネスの初期段階で学んだ教訓を参考にすることができる。

観光事業における茶文化の商品化:交流プロジェクトにおけるガストロノミーツーリズム展開に関する概念

本プロジェクトでは、観光事業における茶文化商品化の4つの要素を柱としている。それらは、1)茶空間、2) 茶産業コミュニティ、3) 茶製品とサービス、4) 茶関連の活動である。以下の要素に基づいてお茶にまつわる文化を観光商品への転化を進めている。

1.茶空間
茶空間は、観光客を誘致し茶料理の食材を提供する上で大きな役割を果たす。茶空間とは、茶畑だけではなく、お茶の栽培地域全体の農業生態系も含む。その地域での農作物の収穫期などを示す農事暦に従い、観光客は茶摘みや果物や野菜の収穫などの農作業に参加することができる。また茶空間は、観光ルートを通じて他の観光資源(たとえば滝、温泉、茶農園、宿泊施設、レストラン)とも関連している。

本プロジェクトでは、観光客向けに梅ヶ島のガストロノミーティーツーリズムのウォーキング・コースを4本開発した。作成した観光マップには、お茶関連の観光名所と茶料理を楽しめる場所を示している。また静岡駅からウォーキング・コースのスタート地点までバスを利用する人向けに、バス情報も掲載している。この取り組みが目指すのは、観光客数を増やし、地元コミュニティをてこ入れし、地元路線バス会社を支援することである。

梅ヶ島の観光ウォーキング・コースづくりを参考にして、今度はプラヤプラー村が村の茶空間の開発に取り組んだ。村人たちは、観光ルート作成のために茶空間に関連するリソースの有無を調査し、古くからあるお茶の木や、伝統的な竹小屋へのルートを切り開いたり、観光客が地域の情報や地図を入手することができる観光情報センターも建設した。

梅ヶ島では、5つの茶農家が本プロジェクトと連携した。(「お茶とわさび栽培の杉山農園」、「梅ヶ島くらぶ」、「MUSHしむら農園」、「梅ヶ島天空ファーム」、「秋山農園」)。これらの農園は観光マップに掲載されている。

杉山農園は、お茶の製造やわさび栽培を経験できるプログラムを運営している。梅ヶ島くらぶでは、ほうじ茶用の茶葉の焙煎や、チャイ用の茶葉のブレンドといったプログラムを体験できる。MUSHしむら農園や梅ヶ島天空ファームでは、椎茸狩り、そして秋山農園では、隠れ茶を守る会が茶摘みやお茶作り活動を主催している。

2.茶産業コミュニティ
茶産業コミュニティとは、同じ茶空間に居住する生産者または農家世帯の集まりであり、有形無形の両方を含む。宿泊施設やホームステイ、ファームステイとして商品化できる生産者の家屋や茶工場などが有形な面だ。無形の面とは、茶産業コミュニティの慣習、信念、暮らしやライフスタイルなどを指す。

茶産業コミュニティの持つ有形無形の面を用いてガストロノミーティーツーリズムを展開するためには、若手のお茶生産者が、料理やサービスマネージメントに取り組んでいく必要がある。観光事業や茶産業のトレンドを熟知することも必要だ。たとえば宿泊施設やレストランで独自の茶料理メニューを提供したり、ティーガーデンや茶工場でお茶に関する観光プログラムを運営することがあげられる。地域の独自性に基づく斬新な料理の提供は、ガストロノミーティーツーリズムの文脈において茶産業コミュニティをブランド化する上で必要不可欠だ。なぜなら、人々は似ているものより異なるものに惹かれるからだ。これは、梅ヶ島とプラヤプラー村の双方による、地元の茶料理のレシピの共有から得られた知見である。

写真3. プラヤプラー村の茶料理ワークショップの一コマ。 写真3. プラヤプラー村の茶料理ワークショップの一コマ。

プラヤプラー村では、地元のシェフたちが村人にアカ族ならではのユニークな茶料理のレシピを教えている(写真3)。創造的な茶料理のレシピを10代の若者に伝え、これが世界中に紹介されることを期待している。お茶を使用したタイの伝統的な多層ケーキであるカノム・チャン・チャ・タイに、梅ヶ島で採れた紅茶シロップをかけて出すのはオリジナルレシピの一例である。このレシピは、本交流プロジェクトを通じて考案されたものである。また、日本側の参加者がプラヤプラー村の人々に抹茶くず餅やお団子などの和菓子の作り方を教えたりもした。

梅ヶ島では、大野木荘(旅館)が本プロジェクトに向けて色々な茶料理メニューを創作し、お茶を使用したペペロンチーノ・ティー・スパゲティーなどの料理が開発された。湯の島館をはじめとするプロジェクト参加者らは、徐々に宿泊施設で茶料理を提供するようになった。同旅館では紅茶のタイ風しゃぶしゃぶを提供している。現在では、梅ヶ島コミュニティ内の多くの宿泊施設が茶料理を提供している。その内10か所が本プロジェクトと連携し、観光ガイドブックやマップに情報を掲載している。

プロジェクトでは、とりわけ日本において、コミュニティーのメンバーやそれ以外の人たちにお茶を利用した様々な製品や活動を作り出すことを提案した。たとえば、ユニークな活動として、隠れ茶を守る会は料理用に発酵した茶葉を製造した。梅ヶ島天空ファームでは、梅ヶ島のお茶の葉を材料とする新しいメニューを開発し、興味をもった観光客に農園でのキノコ狩り経験につなげている。同ファームのバーベキュー施設では、椎茸ピザに緑茶で炊いたご飯と緑茶団子を添えて提供している。静岡県焼津市にあるお寺では、お寺のプロモーションを目的に住職がガストロノミーティーツーリズムのコンセプトを取り入れ、観光客向けの活動を始めている。

3. 茶製品とサービス
商品化が進むにつれて、茶空間や茶産業コミュニティを活用した様々な茶製品やサービスが開発された。お茶の土産品、茶農家のレストラン、茶畑ウォーキング・コースのパッケージツアーなどである。本プロジェクトの成果の一つとして、ティーペアリング(茶と食べ物の組合せ)を含む様々な健康的な茶料理やお茶ベースのカクテルが創られた。本プロジェクトで作成した梅ヶ島とプラヤプラー村向けの料理本では、飲食物の貴重な材料としてお茶を新しく捉え直すことを提案している。この新たな取り組みは斬新なアイデアを取り入れて、茶畑で摘んだ新鮮な茶葉を加工したさまざまな茶製品(緑茶、紅茶、抹茶、お茶の漬物、茶オイル、お茶シロップなど)などを開発したが、これらは地元で採れた他の農産物やハーブなどの天然の材料を使用して作ることができる。プラヤプラー村のアカ族に伝わる伝統的エスニック茶料理であるモーホーバイチャと呼ばれる茶葉で包んだ豚肉料理(写真4)や、桜エビを添えたペペロンチーノ・ティー・スパゲティなど梅ヶ島で提供する地元の和食材を使った西欧料理(写真5)などのレシピを含む料理本も作成した。本プロジェクトで意見交換を通じて編み出されたこれらの10以上のレシピは、自宅やレストランで料理することができる。

写真4. アカ族の茶料理の一つ、茶葉で豚肉を包んだ料理モーホーバイチャ。写真5. 梅ヶ島の創作茶料理、桜エビ添えペペロンチーノ・ティー・スパゲティ。 写真4. アカ族の茶料理の一つ、茶葉で豚肉を包んだ料理モーホーバイチャ。写真5. 梅ヶ島の創作茶料理、桜エビ添えペペロンチーノ・ティー・スパゲティ。


調理に関しては、肉が硬くなってしまうためお茶は豚肉などの肉とは相性が良くない。しかし、お茶を使って家畜を飼育した場合は肉が柔らかくなる。この知見は、豚に緑茶を飲ませて飼育した静岡市のブランドTea豚に関する話しから見て取ることが出来る。梅ヶ島にある温泉レストランがTea豚カツを提供し、この革新的な料理を用いて地元のイメージを打ち出している。茶製品を作るには、地元の情報や伝統に注目するだけではなく、それが持つ意味を再解釈し、新しい要素にも焦点を当てるという独自性が求められる。旅行の目的地として観光客に選ばれ、消費者の購買意欲を掻き立てるためには、ストーリーテリング(地元固有の物語を語ること)が強力なブランド構築のツールとなり得る。

4.茶関連の活動
プラヤプラー村は、国連世界観光機関がいうところの「ガストロノミーツーリズムは低開発地域でこそ実施可能である」という点で理想的な場所である。ガストロノミーツーティーリズムに関する活動は、コミュニティの魅力を作り出す。また梅ヶ島のように衰退する地域であっても、ガストロノミーティーツーリズムは観光客を誘致する新たな戦略として大きな役割を果たすことができる。茶空間や茶産業コミュニティにおいてガストロノミー関連事業を作り上げるには、ティーガーデンから採れたものを使った食事の提供も含まれる。観光客は茶の木の育て方を学び、茶葉を収穫し、茶製品を加工し、お茶のスイーツを作り、お茶を煎じ、またお茶と組み合わせた食事を味わうことができる。たとえば、茶畑でボランティアとして働く、観光客が茶葉を摘む、学生がお茶を煎じるなどの活動は、地元茶農家や起業家の支援にもつながる。またこのような活動に関連し、茶産業コミュニティは、茶料理クラスやお茶の淹れ方コースやお茶のお土産づくりワークショップなど、より多くの茶関連サービスを観光客に提供することができる。

また、お茶に関するガストロノミーツーリズムは、お茶に興味があり、新しい茶料理を試したり、ワークショップでお茶料理を作ったり、お茶について学ぶプログラムに参加するなど、関心の高い常連客を引き付けることが出来る。茶産業コミュニティの再活性化に向けたガストロノミーティーツーリズムの実践には、新しい観光客向けの商品や活動作りが必要である。これらは本プロジェクトの中で行ったガストロノミーツーリズムに関するセミナーや、チェンライ県の地元リーダーによる大学生向けのフード・ビジネスに関する講演を通じて着想を得たものである。

成果と今後の計画

写真6. アカ族の茶料理を食べながら、プラヤプラー村で行われたガストロノミーティーツーリズム交流プログラムで日本人とタイ人参加者の間でメニュー作りをめぐって意見交換の一コマ。 写真6. アカ族の茶料理を食べながら、プラヤプラー村で行われたガストロノミーティーツーリズム交流プログラムで日本人とタイ人参加者の間でメニュー作りをめぐって意見交換の一コマ。

ガストロノミーティーツーリズムに関する交流活動から生まれた本プロジェクトの成果は、プラヤプラー村および梅ヶ島という二つの地域におけるお茶と観光産業の今後の発展につながるものである。

プラヤプラー村では、新しい世代のお茶生産者がけん引し、今後3年から5年以内に観光ビジネスを成長させることが期待されてる。本プロジェクトは、新たな観光ビジネスを支援し、観光客向け商品(茶料理メニューや飲み物、お土産としてのオルゴールティーセットなど)を作る若手の茶農家や起業家を支援している。また地元の若者と本プロジェクトメンバーが連携し、プロモーションのための音楽や歌を作ったり、ビデオやウェブサイト、ガイドブック、ウォーキング・コース・マップや料理本を作ることでガストロノミーティーツーリズムの目的地としてのプラヤプラー村のイメージづくりに貢献した。観光情報センターの設置や古くからあるティー・ツリーへの散策路の整備、レストランや宿泊施設で行う質の高いサービスは、梅ヶ島を含む日本全般から学んだ成果である。一例として、日本の懐石料理を手本として、今ではアカ族独自のセット・メニューを提供するようになった(写真6)。これらの成果として、特に茶農家や学生などの若者を中心に地元住民の間のコミットメントを強めている。これらの成果は、小さなお茶の木が未来へと向かって成長し続けるかのように、村人たちの心の中に刻み込まれた。

梅ヶ島では、長期的展望として外国人観光客を増やすことでティーツーリズムや温泉観光の衰退の流れを逆転させることを目指している。それに向けて、本プロジェクトでは日本茶と食文化に関心を持つタイ人観光客を主な対象として、英語とタイ語による情報提供を行っている。日本にとって、タイは中国、韓国、台湾、香港に続いてアジア圏における観光客誘致の重点市場となっている。タイ人観光客は日本の食文化体験と日本茶に高い関心を抱いており、ガストロノミーティーツーリズムを通じてタイ人観光客を対象にすることは大きな潜在的成長可能性を秘めている、しかし、外国人観光客の受け入れは、若者が少ない梅ヶ島にとって容易ではない。そこで、本プロジェクトの目標の一つとして、観光ビジネスを創り出す上で高齢者に力を発揮してもらいつつ、コミュニティの外から若者を招き、地元住民と協力して茶産業と観光事業を盛り上げてもらうことを目指している。母親に代わってプラヤプラー村を訪問した16歳の女性がいたものの、交流活動に参加した若者は少なかったが、実施された取り組みが地域の 将来にとって役立つものであることが期待される。

世界規模で強まる茶産業、東洋から西洋へ

日本とタイの交流に加え、本プロジェクトでは、ビジネスや教育プログラム、地域開発などの取り組みを通じて世界的な茶産業やティーツーリズムのネットワークを拡げてきた。ビジネスに関しては、バンコクで2022年5月24日から28日まで開催された世界最大の食品飲料関連の見本市であるTHAIFEX – ANUGA ASIA 2022において本プロジェクトのメンバーが日本とタイの茶製品を展示した。同見本市には世界100か国以上から5万人超の参加者が集う大イベントである。同見本市会場では、チラシの配布や本プロジェクトのFacebookページの紹介、梅ヶ島とプラヤプラー村の茶製品の展示を通じてガストロノミーティーツーリズムの促進を行った。さらに、タイの茶産業ネットワークの代表者らの梅ヶ島訪問と合わせて、2022年10月に静岡で開催された「世界お茶まつり2022」に出展し、本プロジェクトの成果を展示した。

写真7. 梅ヶ島のガストロノミーティーツアーを視察した本プロジェクトのお茶農家訪問の一コマ。ほうじ茶を焙煎する留学生たち。 写真7.梅ヶ島のガストロノミーティーツアーを視察した本プロジェクトのお茶農家訪問の一コマ。ほうじ茶を焙煎する留学生たち。

教育活動の取り組みとして、本プロジェクトでは、大学生、研究者、一般市民に向けたセミナーや特別講演会、茶農園への訪問などを行った。会場とFacebook Liveを通じて、タイのメーファールアン大学の学生や市民に向けて、お茶とガストロノミーに関する講演も行った。本プロジェクトの代表者が、静岡県立大学の日本人学生に対してガストロノミーとティーツーリズムについて講演し、中国の広西職業技術学院で中国人学生に対しても講演を行った。タイ側のチームは、インド人交換留学生向けのお茶学習プログラムを開催し、彼らを試験的に観光客として見立てプラヤプラー村でガストロノミーティーツーリズムを経験してもらうことができた。日本側チームは、梅ヶ島におけるガストロノミーティーツアーを視察、促進すべく茶農園への訪問を開催した。タイ、台湾、ベトナム、マレーシア、ミャンマー、カザフスタン、フランスを含む各国地域出身の留学生9人が参加した。お茶栽培を学び、創造的な茶料理を味わい、ほうじ茶などのお茶を製造するなどさまざまな活動に参加した。(写真7)また、本プロジェクトは、将来の連携に向けてトルコ、カザフスタン、タイの大学の間でガストロノミーとティーツーリズムに関する研究者ネットワークの設置を促進した。

地球規模での茶産業コミュニティの発展については、本プロジェクトは、英大手出版社ラウトレッジのティーツーリズムハンドブック (The Routledge Handbook of Tea Tourism) の一章を担当し、ガストロノミーティーツーリズムに関する文献および世界各地のケーススタディをいくつか紹介した。タイでは、本プロジェクトの一環として梅ヶ島とプラヤプラー村の茶産業とティーツーリズムに関するテレビ番組を放送した。また、本プロジェクトでは、デザイン分野でのユネスコ創造都市である茶産業地域としてチェンライ県を支援するために、ガストロノミーティーツーリズム交流に取り組む経験を共有した。本プロジェクトは、ティーツーリズムの国際作業部会に対し、ガストロノミーティーツーリズムのコンセプトを地球規模で茶産業コミュティの発展のためのツールとして活用するよう敷衍した。国際作業部会のメンバーは、中国、インド、スリランカ、インドネシア、マレーシア、タイ、ミャンマー、イギリス、ドイツ、カナダなど世界各地のお茶の産地と消費国から成り立っている。

プロジェクトの終了後、代表者は本プロジェクトから得た教訓をトルコなどのヨーロッパのお茶生産コミュニティに提示する予定である。このことにより東から西への茶産業ネットワークを拡大する機会になるであろう。

トヨタ財団からの助成を得た本プロジェクトが実施された2年間の間に、ガストロノミーティーツーリズムのコンセプトは徐々に普及して来た。現在では、このコンセプトは、茶産業コミュニティだけでなく食品関連ビジネスやお茶に取り組む教育機関の間でも認識されるに至った。本プロジェクトの目指すところは、貧困と飢餓を終わらせるという国連持続可能な開発目標(SDGs)の実現に向けて貢献することである。

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