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研究助成特定課題「海の東アジアが醸成する文化」選後評

選後評

2008年度トヨタ財団研究助成特定課題「海の東アジアが醸成する文化」の選考について

選考委員長 伊藤亜人

2008年度に当該特定課題に対して提案がなされた15件のプロジェクトのうち、予備選考の段階において明らかにプログラムの趣旨に沿わないと判断されたものなどを除いたプロジェクトについて選考委員が企画書に目を通して事前評価を行った。その結果に基づいて、本選考委員会では審査を行った。

その上で選考委員会での事前評価のプロセスにおいて指摘された調査対象、研究陣容、成果の活用などの改善を求められた点について、選考委員会、財団事務局、採択候補となっている応募者との討議する機会としてプレゼンテーション(ヒアリング)を実施することとなった。これは、本年度から導入された新たな試みである。ただし、海外在住の木村淳氏についてはプレゼンテーションの実施を見送った。

プレゼンテーションでは、改めて応募者からパワーポイント、映像資料、プリント及び口頭によるプロジェクトの補足説明を受け、それに対して選考委員および財団側との間で活発な質疑と討論が行なわれた。


助成対象3件

小林 公治
海の東アジアが醸成した貝と漆の文化「螺鈿」の再発見 ー その共通性と多様性を探る 520万円(2年)

木村  淳
沈没船資料を主体とした中世東アジア航洋船に関する分析研究 ー 東アジア地域における水中文化遺産保護管理に向けて 200万円(2年)

上水流久彦
沖縄と台湾の境界領域における越境実践と生活圏構築プロジェクト 388万円(2年)


小林公治氏のアジアの螺鈿(らでん)をめぐる応募プロジェクトについては、従来の博物館による調査・展示が重点を置いてきた形態・技術・歴史・分布に加えて、選考委員からは螺鈿が製作され愛用・流通される社会的・文化的脈絡と過程にも視野を広げる姿勢が求められ、研究成果の活用においても、人々の関与や地域社会の状況まで含めた魅力的な展示・公表を心がけることが求められた。また調査対象についても、プログラムの趣旨との関連もあり、今次はアジアに総力を注ぐこととし、ヨーロッパにまで手を広げることを控えることとなった。

上水流久彦氏によるプレゼンテーションにおいては、選考委員からの指摘と要望に応えて、台湾・沖縄間の地域交流・市民交流との連携について、当初の応募プロジェクトよりも一層踏み込んだ積極的な方針が示され、その実現のための研究陣容と態勢作り、成果の活用面についても活発な討論がなされた。

以上のとおり本特定課題の選考は、予備選考、選考委員による事前評価、選考委員会での討議、プレゼンテーションの四段階を経て行われ、その中でも最終段階のプレゼンテーションでは、応募者・選考委員・財団側の三者による活発な質疑応答を通して、企画の改善に向けた建設的かつ具体的で有益な討論がなされ、本プログラムがこれら三者による共同作業であることを改めて実感する機会となった。

企画書をベースとする事前評価とのバランス、来団することが困難な海外在住者とのバランスなど今後考えるべきチャレンジはあるが、今後もこのプレゼンテーションという審査の手法について、効果的に運用していただければと考える。

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