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アジア隣人ネットワークプログラム選後評

選後評

2008年度アジア隣人ネットワークプログラムの選考について

選考委員長 白石 隆

2008年度アジア隣人ネットワークプログラムは、課題解決型ネットワークの構築支援を打ち出し、公募を行った。またこれまで公募領域を設定しなかったのに対し、今回は五つの課題領域(人の移動、平和構築、国際医療協力、資源管理、文化の創造・再創造)を設定、助成上限額も、設定課題の規模が大きくなる可能性があることに鑑み、1件当たり500万円から2,000万円に増額した。

本年度の応募件数は241件、これは過去最高である(昨年度は175件)。その内訳は、日本国内からの応募159件、海外からの応募82件となっている。日本国内での公募説明会の実施が応募件数の増加につながったと考えられる。厳正なる審査の結果、採択候補として14件を理事会に提案する。本年度の採択候補案件には「人の移動」、「文化の創造・再創造」の領域に該当する案件が多い。その一つの理由は、平和構築、国際医療協力などの分野において政府、JICAの支援プログラムと重複する提案が少なくなかったことによる。

ネットワーク構築支援の趣旨を活かすため、選考委員会においては(1)提案がネットワーク・ハブの形成に繋がるかどうか、(2)ネットワーク・ハブが既に形成されている場合には、ネットワークの成長(ネットワークが拡大しその密度が高まること)に資するかどうか、に特に注目した。課題解決のためのネットワーク構築にはさまざまなやり方がありうる。しかし、いかなるネットワークもノードとリンクから形成され、ネットワークがダイナミックであればあるほど、ネットワークの成長とともにノードのいくつかが他と比して圧倒的に多くのリンクをもつハブとなることが多い。選考委員会ではこうした観点からハブの形成とネットワークの成長に注目して選考を行った。選考委員会が理事会に提案する14件の採択候補案件において、こういう意味でのネットワーク構築によって所期の課題達成のための活動が行われ、またそれを担う人材の育成が進展することに期待したい。

ここで、選考委員会で高い評価を受けた2案件について紹介する。

橋本直子
「新日系フィリピン人(JFC)を支援する政府機関・国際機関・民間団体・企業間のネットワーク構築 ー 新日系フィリピン人の日本への帰還・定住スキームの制度化をめざして」(2,000万円/2年)

上記案件は、「新日系フィリピン人(JFC)」が日本で経済的自立を果たしながら暮らせる制度作りのため、国際的・中立的な立場を活かし、さまざまな団体、機関、企業などを巻き込んで課題解決に取り組むプロジェクトである。本案件は、プロジェクト終了後のJFCのフォローや就職先の斡旋などといった難しい点もあるが、解決を要する課題であり、ここで得られる成果は、他の難民や移住問題にも適用される点が評価された。

喜多千草
「情報基盤技術で支える教育現場の多言語利用環境 ー アジアの移民を受け入れる多文化共生社会の実現のためのネットワークづくり」(1,973万円/2年)

上記案件は、近年、日本各地の教育現場で起こっている外国人児童の言語問題の解決として、各地の教育委員会や学校が作りためてきた多言語のお知らせ文書や用例集などを、全国の学校で再利用できるような情報基盤構築の完成をめざす。これまで散在してきた情報のハブが形成されること、また、教育現場のみならず、医療分野など他の現場においても同様の動きが展開していくことを期待したい。

なお選考委員会ではアジア隣人ネットワークプログラムの課題と今後の取り組みについても議論がなされた。

1.本プログラムの方向性と、ネットワークについての考え方について

今年で6年目を迎えた本プログラムは、その短い歴史の中でネットワークに対するとらえ方も少しずつ変化してきた。当初は、組織を越えた、異質な地域、文化などの双方向的なつながり、コミュニケーションといったことを重視していた。現在、上で述べたように、ネットワークのハブである人や拠点となる場所の強化、育成により力を入れるものとなっている。
その一方で、課題解決をめざす本プログラムの趣旨とネットワークとの関連性がどれほどあるのかという議論も出始めている。これに関しては、今後プログラムの見直しを視野に入れた検討が必要である。

2.海外からの申請案件について

本年度採択案件14件のうち、海外の申請者は3件にとどまる。特に東南アジアからの応募については採択となったものが少なかった。これには様々な理由が考えられるが、その一つは、東南アジアにおける本プログラムの認知度の低さ、テーマ、募集要項の馴染みにくさにあったと考えられる。財団としては、これに鑑み、アジア隣人ネットワークプログラムにおいて、東南アジアの人々がいま直面している課題の解決に資するようなプロジェクトをいかに発掘し支援していくか、考える必要がある。

3.プロジェクトのフォーローアップと連携

2008年度採択候補案件には高額の案件が少なくない。これらのプロジェクトをうまく運営していくためには、助成対象者、選考委員会、財団のプログラムオフィサーの連携が必要となる。財団に対して2年後、各プロジェクトがどのような成果を達成し、社会的にどのような効果をもったか、そうした評価のためにもシンポジウム、ワークショップ等を開催し、情報の交換を行うことを期待している。

アジアにおいては、人、モノ、カネ、情報の流れの拡大とともに、人の移動、環境、感染症、人間の安全保障等、多くの分野において、課題解決のために、さまざまな交流と協力が必要となることは確実である。本プログラムがアジアの地域社会においてこれらの問題を解決する人材育成を含む土台づくりに大いに寄与できるよう進めていきたい。

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