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財団からのお知らせ
公開シンポジウム「『人と人とのつながり』がアジアの可能性をひらく」を開催しました。
情報掲載日:2007年10月30日

トヨタ財団は2007年10月25日(木)13:30より、ハイアットリージェンシー東京において、「『人と人とのつながり』がアジアの可能性をひらく」というテーマのもとでシンポジウムを開催しました。本シンポジウムは、アジア隣人ネットワークプログラムについての理解を皆さまに深めていただくこと、その経験を共有していただくことを願って実施したものです。
3名の発表者はいずれもアジア隣人ネットワークの助成対象者であり、それぞれの助成プロジェクトを通じての経験から、ネットワーク構築に取り組んだきっかけやネットワーク構築の過程、それが生み出したもの、そして今後の展望などについて発表をしていただきました。
まず、逵(つじ)志保さん(愛知県立大学)はアジアにおける「みえないつながり」を掘り起こす観点から、徐福伝説を「縁」とした地域と人とのネットワークの構築―口承文芸における新たな比較研究の可能性に向けて―というテーマで発表を行いました。
徐福に関しては、『史記』に、紀元前219年秦の始皇帝の命を受け数千人とともに東海の三神山へ不死の薬を求めて船出し、五穀の種と百工(技術者)、平原広沢を得て王となり帰らず、との記述があります。また、中国、韓国、日本の各地において、徐福に関するさまざまな伝説が残っています。
このプロジェクトでは逵さんが各伝承地・イベントに足を運び、地域の伝承の担い手である長老者とこまめにコミュニケーションをとってきました。研究者である逵さん自身があえて連絡係に徹することによって、各地の伝承を支えた人々がつながりを深め、徐福を通じた地域おこしや伝承の次世代への継承がなされていきました。さらには徐福伝説を研究の場で議論する展望がひらけつつあるとのことです。当初の、逵さんが各地の人々をつなぐ役割を果たす、いわば「わたしのネットワーク」から、ご本人が不在でも機能するネットワークとなりつつあるようすをうかがい知ることができました。
二番目に報告された饗庭伸さん(首都大学東京)は、交流・比較を通じて、個別性と普遍性を発見する観点から「東アジアにおけるまちづくりの現代史を共有するアーカイブネットワークの構築」というテーマで発表を行いました。
饗庭さんは韓国・台湾・日本の「まちづくりの現代史」について、若手研究者のネットワークをつくり、まちづくりの先駆者への各国共同インタビューを通じて共通の歴史を描き、その経験を若手世代へ伝承していくプロジェクトを実施しています。このプロジェクトでは研究そのものではなく、研究の土台となる共通認識をつくることを目的としました。そこで方法はなるべくシンプルに、直接会って議論する場をもつことを重視し、多くの結節点をつくることができるよう気をつけているとのことでした。
成果の示し方についてのフロアからの質問に対して、プログラムの成果は学術論文よりむしろ各地の市民に向けた発信の形になるよう努めたい、と饗庭さんは抱負を語りました。
最後に話をされた筒井哲朗さん(特定非営利活動法人シャプラニール)は「グローバルコミュニティにおける国際NGOと現地NGOとの役割と関係―南アジアを事例として」というテーマでの発表でした。
「シャプラニール=市民による海外協力の会」は1972年に設立された国際NGOです。当初バングラデシュにおいて直接プロジェクトを実施してきましたが、1996年ネパールでの活動開始を機に現地での活動を現地NGOとの共同で行うようになり、すでに10年がたちました。そのなかで「国際NGOの役割」や「現地NGOとの関係のあり方」に関する問いが生じ、さまざまなNGOとネットワークを築くことによって、今後の活動の指針を探りたいというところから、このプロジェクトがスタートしました。いわば、そのつながりを通じて、シャプラニールの立ち位置を明らかにすることがこのプロジェクトの目的とのことです。
このプロジェクトを通じて、パートナーシップは固定したものではないことがわかってきた、しかも自分たちが何をしたいのか、その想いを相手側に伝えることからすべては始まる、と筒井さんは語りました。また、このネットワーキングの過程で、インド洋大津波、パキスタン大地震などでの情報収集や初期活動がスムーズに行われたのは、思わぬ成果だったとのことでした。プロジェクトが終了した現在でも、海外NGOと現地NGOとの関係はいわば双方向性をもつ変化するプロセスであるということを意識して、日々の活動を実施している様子がうかがわれました。
コメンテーターの宮村治雄先生(成蹊大学)からは、ルーツを同じくするとはいえ多様な「現在」の姿をもつ複数共同体に関わって、研究者がいかに触媒役を果たせるかといった問いかけがありました。
結びに平松幸三先生(京都大学)は、ネットワーク形成について何をもって成果とするかを判断するのは非常に難しいという点は認めるが、図らずしてネットワークが機能するようなネットワークこそが重要だと指摘されました。この点はアジア隣人ネットワークの来年の課題となりうるものだと思われます。
質疑応答も活発に行われ、盛況のうちにシンポジウムは終了しました。




